昨年末に中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、またたく間にアジアから欧州、米国、さらには中東・アフリカ地域など世界中に広がり、現時点(4月21日)で247万人を超える感染者と17万人の死者を出しています。WHO(世界保健機関)は、これをパンデミックと認めました。そして、感染は今後さらに拡大していくと思われます。
感染の拡大を抑えるための正しい知識や情報の拡散、社会的隔離、防疫・医療体制の強化、GDPの10-20%に及ぶ経済対策など、この未知のウィルスに対しては広範で迅速・的確な対応が必要です。グテーレス国連事務総長も述べているとおり、特に途上国や社会的に脆弱な人々への支援も必要です。有効な治療薬もワクチンも未だない、この人類への挑戦に打ち勝つには、国際社会の連帯が必要です。驚異的な感染力で世界を席巻しているこのパンデミックと闘うためには、WHOが指導するグローバルヘルスカヴァレッジにとどまらず、地球環境及び地球社会の持続可能性を担保する、いわば、「地球の健康」planetary health の確立を目指して、国連システム諸機関が協同して、国家や地域機関とともに世界の人々のためにその機能を果たすことが求められています。いま、まさに国連の真価が問われているといえるでしょう。世界は分断と対立ではなく、連帯と協力によりこの難局を乗り越える必要があります。
パンデミックへの対応においては、人種も国境もありません。WHOへの誹謗中傷を含め、誰かに責任を押し付けたり、偏見と差別を持つことは人として最も恥ずべき態度であり、ひいてはこのことが新たな対立要因となることは、国家としても国連としても避けなければなりません。国際社会が連帯感を持って協力し、パンデミックを克服して一人一人の健康を回復することによって、誰ひとり取り残さないSDGs(持続可能な開発目標)の達成につなげなければなりません。
今回のパンデミックという人類の危機は、それ自体、戦争に匹敵するような危機であるだけでなく、すでに深刻な国家間及び国内における不平等に拍車をかける、国際の平和と安全への脅威でもあります。75年間、世界平和を維持してきた国連システムが、人類全体を脅かす挑戦に耐えられるものであるか否か、大きな試練を迎えています。
それ故に、日本を含む国連加盟国は、We the peoples で始まる国連憲章の原点に立ち返り、国連を中心とした、衡平かつ包摂的で持続可能な、人間本位の平和と安全を維持するレジリエント(強靭)なグローバル・ガヴァナンスシステムを構築する必要があります。これこそが真の国連改革と呼べるものです。
日本国際連合学会は、このような世界と国連のおかれた状況に深く思いを馳せて、研究者や実務家として、また、世界市民の一員として教育や研究、情報発信など様々なかたちで行動していくことで、この人類の危機を前にして、世界が歴史の教訓を学び、活かす機会となるよう微力を尽くしたいと考えます。
2020年4月21日
日本国際連合学会